the kisuke3-5のブログ

主に鳥や恐竜について書いていきたいと思っています。まだ勉強中の身です。よろしくお願いします。

獣脚類、マニラプトル類、エウマニラプトル類、鳥群  恐竜の中での鳥類の位置について

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図1.主竜類における鳥類の位置を示した分岐図。鳥群の個所のみPei et al. (2020)を、他はAllen et al. (2013)を参考に作成。()で書いたものはそのグループの主な特徴

 鳥類は恐竜であるという事は定説となっています。では鳥類は恐竜のどのようなグループに含まれるのでしょうか。今回、鳥類を含む恐竜たちのグループの主な特徴について書いていきたいと思います。尚、本来、鳥以外の恐竜を「非鳥類型恐竜(Non-avian dinosaur)」と呼びますが、この記事では、これらを「恐竜」と呼ぶこととします。

 

鳥類は肉食恐竜の仲間

 鳥類は恐竜の中でも「獣脚類(じゅうきゃくるい 英:theropod)」というグループに含まれます。獣脚類を簡単に説明すると「肉食恐竜」のことです(一部例外もいます。)。ティラノサウルスアロサウルス、スピノサウルスなどもこの獣脚類に含まれます。獣脚類には鳥の大きな特徴の1つである「叉骨」がありました(Nesbitt et al. 2009、図2)。この獣脚類はいくつかのグループで構成されており、さらにそのグループもいくつかのグループによって構成されています。鳥類はこれらの中でマニラプトル類(Maniraptora)というグループに含まれています。

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図2.ティラノサウルスの骨格。叉骨の位置は赤い○で囲んでいる。

 

マニラプトル類とは

マニラプトルのマニ(Mani)は「手」という意味で、このグループの大きな特徴は手首の形にあります。手首にある骨は「手根骨」という骨で構成されています。マニラプトル類の手根骨は半円のような形をしており、腕の骨と接する部分の方が弧を描いています。このような形になることで、手を外側へ大きく曲げることができたと考えられています(Fastovsky & Weishampel 2015)。現生鳥類は手根骨と中手骨(手の骨)と癒合していますが、初期の鳥である始祖鳥にはこの特徴がまだ残っています(図3)。

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図3.始祖鳥の手根骨(で囲っている場所)

また、マニラプトル類の中にはほかの獣脚類とは骨盤の形が少し異なる種もいます。骨盤を形成する骨に「恥骨」と「坐骨」という骨があります。人間も同様です。獣脚類の場合、この2つの骨は「ハ」のような形を形成しています(図4左)。しかし、マニラプトル類の場合は恥骨がやや坐骨によるような形をしています(図4右)。現生種では癒合してしまっていますが、絶滅した鳥類の中にもこの特徴を持った種もいました(Fastovsky & Weishampel 2015)。

マニラプトル類もまた数多くのグループによって構成されています。鳥類はこの中で「エウマニラプトル類」というグループに含まれています。

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図4.ティラノサウルス恥骨(赤)坐骨(青)はハの形を形成しているのに対し、マニラプトル類のデイノニクスの恥骨(赤)はやや坐骨(青)によっている。

 

エウマニラプトル類とは

エウマニラプトル類の特徴は、脛を構成する骨の1つである「腓骨(ひこつ)」が縮小していることです(Fastovsky & Weishampel 2015)。また、エウマニラプトル類では相対的に腕が長くなりました。これによって姿勢も変化し、現生鳥類の独特な姿勢に近い形になっていたと考えられています。また、この段階ではすでに腕には風切羽があり、翼になっていました。自力で飛ぶことができた種もいたのではないかと考えられています。

エウマニラプトル類は大きく2つのグループに分けられます。1つはデイノニコサウルス類、そしてもう1つが鳥群(Avialae)です。鳥類は鳥群に含まれています。

 

鳥群とは

名前が似ていますが、鳥群=鳥類ではありません。鳥群にも恐竜がいます(Pei et al. 2020)。現生鳥類や白亜紀に出現した鳥類と、これらの恐竜では形態的な違いがいくつか見受けられます(例えば竜骨突起の有無など)。しかし、初期の鳥類とされている始祖鳥の違いはもはやほとんどありません。始祖鳥は現生鳥類よりも鳥群の恐竜の方が系統的に近いのではないかという意見もあります(Godefroit et al. 2013)。始祖鳥を初期の鳥とした場合、どこから鳥類とするのかはっきりとすることができなくなっているかもしれません。

 

まとめ

今回、鳥類が恐竜の分類の中でどんな位置にいるのかを説明してきました。初期の恐竜と鳥類とでは相違点も少なくはなかったと思います。しかし、徐々に鳥類と同じ特徴を持った恐竜が出現し、最も近縁な種ではもはや初期の鳥類との違いが分からなくなるまでに至っています。鳥は突然進化したのではなく、長い時間をかけて特徴的な形質を獲得したのだと、このブログを書いていて改めて感じました。

 

参考文献

Allen V, Bates T K, Li Z & Hutchinson R J (2013) Linking the evolution of body shape and locomotor biomechanics in bird-line archosaurs. Nature Vol. 497 104–107

 

Fastovsky D E & Weishampel D B/真鍋真監修、藤原慎一、松本涼子訳 (2015) 恐竜学入門―かたち・生態・絶滅(日本語訳) 東京化学同人 396pp

 

Godefroit P, Cau A, Dong-Yu H, Escuillie´ F, Wenhao W & Dyke G (2013) A Jurassic avialan dinosaur from China resolves the early phylogenetic history of birds. Nature 498(7454)

 

Nesbitt SJ, Turner AH, Spaulding M, Conrad JL & Norell MA (2009) The theropod furcula. J Morphol 270:856–879.

 

Pei R, Pittman M, Goloboff A P, Dececchi A T, Habib B M, Kaye G T, Larsson E C H, Norell A M, Brusatte L S & Xu X (2020) Potential for Powered Flight Neared by Most Close Avialan Relatives, but Few Crossed Its Thresholds, Current Biology, https://doi.org/10.1016/j.cub.2020.06.105