the kisuke3-5のブログ

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似てる?ミクロラプトルとカラスの特徴を比較

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ミクロラプトルの化石(上)とハシブトガラス(左下)とハシボソガラス(右下)

 

ミクロラプトルの論文を読んでいて時々「なんかカラスに似てるな~」と思う事があります。ここでいうカラスは、ハシブトガラスとハソボソガラスのことです。もちろんミクロラプトルはカラスと似てない部分も多々あります。恐らく生きていた頃のミクロラプトルの姿はそれほどカラスには似てはいなかったと思います。ミクロラプトルには歯、鉤爪を持った前肢、長い尾、翼になっている後肢などカラスや現生鳥類にはない特徴が数多くあります。また、体の大きさでもミクロラプトルの全長は約77㎝だったと考えられています(Xu et al. 2003)。ハシボソガラスが約54~60㎝(松原2007)、ハシブトガラスが約50.4㎝(高木2004)なので、ミクロラプトルの方が大きいです。もちろんミクロラプトルは、カラス科はもちろん、現生鳥類の系統の中にはいません。

 

その上で、どんなところを似てると感じたか、書きたいと思います。

 

体の色

ミクロラプトルの羽毛の色は弱い虹色の光沢をもつ黒だったと考えられています(Li et al. 2012)。カラスの羽毛も「烏の濡れ羽色」なんて言葉があるように青い光沢のある黒です。虹色という点は異なりますが、光沢のある黒という点は共通しています。

 

翼の性能

翼の性能を示す指標の1つに「アスペクト比」があります。アスペクト比とは、縦横比で、細長い翼ほどこの数値が高くなります。アスペクト比の数値が高いと揚抗比も高くなります。揚抗比が高いとエネルギーを節約して飛ぶことができます。なので細長い翼ほどエネルギー消費を抑えて飛ぶことができるという事になります(テネケス1999)。ミクロラプトルのアスペクト比は約6.69、揚抗比は4.6と考えられています(Chatterjee & Templin 2007)。一方ハシブトガラスは、揚抗比はまだ情報を見つけられませんでしたが、アスペクト比は6~7です(白井 2019)。ハシボソガラスアスペクト比は5、揚抗比は5あると考えられています(テネケス1999)。これらのことから、ミクロラプトルとカラスでは、飛行中のエネルギー消費はほぼ同じくらいだった可能性があります。

以前、高速道路を走っていた時、正面をハシブトガラスが滑空をしているのを見ました。このときは左下がりで落ちていきましたが、数秒くらい飛んでいて、20m以上は移動していたのではないかと思います。エネルギー消費の度合いがほぼ同じならミクロラプトルも生きていたころはこれくらいの滑空をしていたかもしれません。ハシブトガラスが滑空だけで飛んでいる姿はあまり見かけることがないように思いますが、今後もう少し注意深く観察してみたいと思います。

但しミクロラプトルにはカラスにように、翼を羽ばたかせるための筋肉はあまり発達していなく、おそらく長距離を移動するといったことはできなかったと思われます。

 

まとめ

ミクロラプトルとカラスでは相違点も多々ありますが、その上で私が個人的に「何かカラスと似ているなぁ」と思ったミクロラプトルの特徴について書きました。もっと調べてみると他にもいろいろ出てくるかもしれません。引き続き論文を読むことやカラスの観察などを続けていきたいと思っています。

 

 

参考文献

Chatterjee S, Templin RJ (2007) Biplane wing planform and flight performance of the feathered dinosaur Microraptor gui. Proc Nat Acad Sci USA 104:1576–80.

 

Li Q, Gao Q K, Meng Q, Clarke A J & Shawkey D M (2012) Reconstruction of Microraptor and the Evolution of Iridescent Plumage. Vol. 335, Issue 6073 1215-1219

 

松原始(2007)生態図鑑ハシブトガラス. バードリサーチニュース4(7)

 

高木 憲太郎(2004)生態図鑑ハシボソガラス. バードリサーチニュース1(4)

 

テネケス ヘンク/ 高橋健次訳 (1999) 鳥と飛行機どこがちがうか―飛行の科学入門 (日本語訳) 草思社 201pp

 

Xu X, Zhou Z, Wang X, Kuang X, Zhang F & Du X. (2003) Four-winged dinosaurs from China. Nature 421 6921 : 335–340