鳥の祖先の小脳の進化について
鳥が飛ぶためには胴体の構造だけでなく、脳の構造も重要です。鳥類は爬虫類から進化しましたが、「頭蓋内の体積/体重」の数値を比較した場合、鳥類は爬虫類の3倍以上もあります(Alonso et al 2004)。
特に「小脳」という運動能力と深くかかわっている部分の発達が重要と考えられています(黒田1986)。鳥は羽ばたき飛翔や滑翔、ホバリング(移動せず空中に滞在する運動)などを行いますが、こういったことをするためには小脳が重要な役割を果たしているのかもしれません。
恐竜の中にも飛べたのではないかと考えられている種がいますが、 恐竜たちの脳はどうだったのでしょうか?
因みに、飛べたと考えられている恐竜についてはこちらをご確認ください
恐竜の段階で進化していた?
Balanoff et al (2013)では、頭骨のCTデータを使って獣脚類の頭蓋内の体積を出しました。その結果、絶滅したマニラプトル類は現生鳥類と比較して、体重に対する脳の大きさは小さいですが、脳全体に対する小脳の大きさがほぼ同じという結果になりました。飛翔に適した脳の進化はマニラプトル類の段階で生じていたことが伺えます。この研究では、ミクロラプトルやアンキオルニスなど発達した翼を持った恐竜たちは含まれていませんでしたが、恐らく結果はそれほど変わらないのではないかと推測します。
そして、さらに後になって脳が拡大する進化が起こったと考えられます。
どのくらい大きな小脳が必要なのかが課題
この研究では、脳自体は現生鳥類より小さい傾向という結果です。なので、飛翔に適した小脳の大きさがどのくらいなのかを分析することで、これらの恐竜たちが飛翔に適した脳を持っていたのか検証できると、個人的には思います。飛翔の起源がいつなのかを知る手がかりの1つになると思うので、今後の研究の進展に注目したいです。
参考文献
Alonso D P, Milner C A, Ketcham A R, Cookson J M & Rowe B T (2004) The avian nature of the brain and inner ear of Archaeopteryx Nature 430 666–669
Balanoff A, Bever G, Rowe T, & Norell A M (2013) Evolutionary origins of the avian brain. Nature 501 93–96
Northcutt G R (2011) Evolving Large and Complex Brains Science 332 6032 926-927
栃木県立博物館編集 (1986) 鳥類と哺乳類の計測マニュアル(Ⅰ) 栃木県立博物館 78pp