the kisuke3-5のブログ

主に鳥や恐竜について書いていきたいと思っています。まだ勉強中の身です。よろしくお願いします。

始祖鳥命名160周年

1861年9月30日、Archaeopteryx lithographicaが初めて学術論文に掲載されたそうです。日本では「始祖鳥」とよく呼ばれていると思いますが、これが始祖鳥の学名と種小名です。今日で160年が経ちました。

今回、始祖鳥について少し紹介したいと思います。

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始祖鳥の化石の1つで「ロンドン標本」と言われているもの。1861年に発見された

撮影場所:恐竜センター

 

生物が進化していることを示した1つの証拠

1859年にチャールズ・ダーウィンが「種の起源」を発表しました。これは「現存するすべての生物は、遠い昔に誕生した1種類の生物の子孫で、長い時間をかけ様々な変化を遂げて今日に至っている」という事を説明しています[1]。これに対して「もしそうなら現生種と祖先の種をつなぐ中間的な生物の化石が見つからないのはおかしい」という反論もありました。始祖鳥はこれに対する1つの回答となりました。始祖鳥の化石を見ると、鳥類の特徴である羽毛や叉骨が見られます。一方で爬虫類の特徴である長い尻尾などもあります。始祖鳥は「鳥類と祖先(爬虫類)をつなぐ中間的な生物」と言えそうです。その後1870年にトマス・ハスクリーによって、鳥類は恐竜から進化したのではないかと説が出てきました[2]。それから世界中で様々な化石が発見され、これらの研究によって、「鳥は恐竜である」という説が定説となったのです。

 

いつ頃いたのか?

始祖鳥の化石は約1億5000万年前の地層から見つかっています。この時代は中生代ジュラ紀後期に当たります。生息場所は違いますが、アロサウルスブラキオサウルスも大体この時代にいました。ティラノサウルストリケラトプスなどはこれよりもずっと後の時代の恐竜たちです。鳥類は一部の恐竜から進化したと考えられていますが、隕石が落ちてきて、大量絶滅が起きるよりずっと前から地球に出現していたのです。

因みに脊椎動物には魚類、両生類。爬虫類、哺乳類、鳥類がありますが、これらのグループの中で最も後の時代に出現したのが鳥類です

 

体の大きさは?

始祖鳥の化石はこれまでにもたくさん発見されていて、体の大きさも個体によって違いますが、ベルリン標本に関しては、生きていたころは体重250gほどだったのではないかと考えられています[3]。現生鳥類で行くとキジバトなどがこれに近いです。こういう話をすると、「始祖鳥って意外と小さかったんだね!」と言われたりしますが、皆さんのイメージ的にはどうだったでしょうか?

 

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始祖鳥の化石の1つで「ベルリン標本」

飛べたのか?

始祖鳥の飛翔能力は、飛ぶことはできたけど、ハトほどうまくは飛べなかったと考えられています。飛ぶためには大きな翼と発達した胸部の筋肉が必要です。始祖鳥には大きな翼はあったものの[4]、胸部の筋肉は現生鳥類ほど発達していなかったので[5]、恐らく短距離を移動するくらいの飛翔能力だったのではないかと考えられています。

 

最初の鳥ではない⁉

始祖鳥は現在知られている中では最古の鳥ですが、現生鳥類の直接の祖先ではなかったと考えられています。現生鳥類と始祖鳥の共通祖先が最初の鳥とされています。また、ここ25年、中国などで羽毛恐竜の化石がよく発見されています。中には始祖鳥よりも古い時代の地層から見つかった種もおり、こうした恐竜も鳥類に含まれるのではないかという研究も出ています[6]。

 

 

以上、始祖鳥について紹介してきました。これを読んでくださった方が、始祖鳥に少しでも興味を持っていただけたなら幸いです。因みに、始祖鳥の飛翔能力については、以前こちらで記事を書いておりますので、もしよければこちらもご覧になってください。

db3.bird-research.jp

 

参考文献

[1] チャールズ・ダーウィン(著) 夏目 大(訳) (2012)超訳 種の起源 ~生物はどのように進化してきたのか 技術評論社 248p

 

[2] Huxley T H (1868) On the animals which are most nearly intermediate between birds and reptiles. Ann Mag Nat Hist 4th 2: 66–75.

 

[3]Wellnhofer P (2008) ARCHAEOPTERYX: Der Urvogel von Solnhofen Pfeil, Dr. Friedrich 256P

 

[4] Yalden DW (1971) The flying ability of Archaeopteryx. Ibis 113(3):349-356

 

[5]Walter JB (2013) The Furcula and the Evolution of Avian Flight Paleontological Journal 47:1236–1244

 

[6] Pei R, Pittman M, Goloboff A P, Dececchi A T, Habib B M, Kaye G T, Larsson E C H, Norell A M, Brusatte L S & Xu X (2020) Potential for Powered Flight Neared by Most Close Avialan Relatives, but Few Crossed Its Thresholds, Current Biology, https://doi.org/10.1016/j.cub.2020.06.105