the kisuke3-5のブログ

主に鳥や恐竜について書いていきたいと思っています。まだ勉強中の身です。よろしくお願いします。

鳥が飛べるのは手と脚と尾を独自に動かせるから!? では恐竜は…?

鳥は歩いてるとき、腕(翼)を動かしたりしません。一方、飛ぶときは足を動かしません。手と足は完全に独立して動かしていることが分かります。また、尾も独自の運動をすることができています。Gatesy & Dial (1993)では、ハトが離陸するときとその前後での腕、脚、尾の筋肉の動きを、心電図を使って測定しました。その結果、尾は翼や脚とは全く異なる波形を示しており、独自の運動をしていることが分かりました。

しかし、すべての動物が腕、脚、尾が独立しているとは限りません。例えば四足歩行で両生類のサンショウオでは、前肢と後肢の筋肉は運動中ほぼ連動していました(Gatesy & Dial 1996)。初期の陸生動物は腕や脚、尾が独立して運動できるような形態を持ってなく、後になって、進化の過程の中でそのような機能を獲得したと考えられています。

この様に3つのパーツが独自の運動ができるようになることは飛翔をするうえでも欠かせない事と考えられています。もしこのような体の構造になっていなければ、飛行中に脚も動いてしまうなどして、うまく飛ぶことはできなかったかもしれません。

では鳥の祖先である恐竜はどうだったのでしょうか?

少し古い研究ですが、今回これについて紹介したいと思います。

 

初期の恐竜は鳥とは違う?

Gatesy & Dial (1996)では、エオラプトルやヘレラサウルスなどといった初期の獣脚類について考察しています。これらの恐竜たちは鳥とは少し異なる構造で、腕と脚は独立して運動できたが、脚と尾は連動していたという説明されています。

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ヘレラサウルス(左)とスズメ(右)の運動モジュールの数と分布を赤で示した図

 

 

これらの恐竜たちは脚に対して腕がそれほど長くないことから、二足歩行をしていたと考えられていります。この事から腕と脚は独立していたのではないかと説明されています。一方、脚と尾ではこの2つをつなぐ非常に発達した筋肉があったのではないかと考えられています。恐竜の大腿骨には第四転子という突起があります。これは現在のワニにもあり、この突起と尾は非常に発達した筋肉でつながっています。ワニも後肢と尾は連動しており、そうした事から、これらの恐竜たちも後肢と尾は連動していたと説明されています。

尚、鳥には第四転子はなく、大腿骨と尾をつなぐ筋肉も縮小しています。

 

マニラプトル類はどうか?

初期の恐竜から鳥が出現するまでの間で、脚と尾が独立して運動できるような形態になる進化が起きたことが伺えます。ではそれはいつ頃だったのでしょうか?

恐らくですが、マニラプトル類が出現した段階でそのような進化は起きていたと思われます。デイノニクスや始祖鳥には第四転子があったという報告はありません。また、これらのグループは尻尾の骨自体も他の獣脚類と比べて細い作りになっています(Gatesy fig.7)。更に、はコエルロサウルス類全般に言えることかもしれませんが、尾の骨の数も少なくなっています(Gatesy & Dial 1996 fig.6)。コエルロサウルス類では、ティラノサウルスなど第四転子があった種もいました。なのでコエルロサウルス類の中でも一部の恐竜が第四転子を消失し、尾も細く短くなるような真価が起きたものと考えられます。

そうした事から、マニラプトル類では鳥類と同様3つのパーツに分かれていたと推測します。

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ティラノサウルスの大腿骨周辺。第四転子を赤い○で囲った


 

 

まとめ

今回、鳥は翼(腕)、脚、尾が独立して運動することができる形態をしていること、初期の陸生脊椎動物や恐竜はこのような形態ではなかったこと、しかしマニラプトル類の段階では鳥のような形態を獲得していた可能性があることについて説明しました。

マニラプトル類に中にはミクロラプトルやアンキオルニスなど飛ぶことができたと示唆されている恐竜もいます。こういった恐竜たちの脚や尾はどんな構造をしているのか、機会があれば確認したいと思います。

 

参考文献

Gatesy M S (1990) Caudefemoral musculature and the evolution of Theropod Locomotion Paleobiology. 16 2 170-186

 

Gatesy M S & Dial P K (1993) Tail muscle activity patterns in walking and flying pigeons (Columba livia). J. exp. Biol. 176 55–76

 

Gatesy M S & Dial P K (1996) Locomotor modules and the evolution of avian flight. Evolution. 50 1 331-340