the kisuke3-5のブログ

主に鳥や恐竜について書いていきたいと思っています。まだ勉強中の身です。よろしくお願いします。

鳥類の祖先たちの羽毛の進化について

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主竜類における鳥類の位置を示した分岐図。-は羽毛の発生段階を示している

は、「羽毛の進化の流れ」の①②

は、「羽毛の進化の流れ」の③④

は。「羽毛の進化の流れ」の⑤

 

 

羽毛をもつ現生の動物は鳥類だけですが、古生物も含めると鳥類の祖先である恐竜にもあった事が分かっています。羽はどの段階でどのように進化したのでしょうか?

様々な化石の発見から、現在分かっていることについて、今回書きたいと思います。

 

羽毛の進化の流れ

羽毛は次のような段階を経ていると考えられています(Fastovsky & Weishampel 2015)。

①羽嚢という筒状の繊維

②1本の根から複数の繊維が出ている状態

③羽軸ができその両側に羽枝がある。さらに羽枝の両側には小羽枝ができた状態。

④羽枝間の小羽枝同氏が絡み合い「羽板」を形成した状態

⑤羽軸を境に羽板の幅の広さが異なるようになる(初列風切羽)。

 

恐竜が出現する前から羽毛はあった?

実は羽毛は恐竜だけでなく翼竜にもあった可能性があります。Yang(2019)をのfig.1などを見ると、②のような状態に見えます。

この事から羽毛は恐竜と翼竜の共通の祖先の段階ですでにあった可能性があります。恐竜(鳥類を含む)と翼竜、ワニなどを含めた爬虫類のグループを「主竜類」と言います。約2億4700万年前に主竜類は、恐竜(鳥類を含む)と翼竜のグループとワニのグループに分かれます(ナイシュ&バレット 2019)。このころから羽毛はあったのかもしれません。

ただし、恐竜と翼竜が分岐した後に、それぞれが独自に進化して獲得した可能性もまだあります。しかし、その場合でも恐竜が羽毛を獲得したのはかなり早い段階だったのではないかと思われます。恐竜は系統的に大きく2つのグループに分けることができます。1つが「竜盤目」もう1つが「鳥盤目」です。紛らわしいですが、鳥は竜盤目です。そして鳥盤目の恐竜の化石から羽毛の化石が出ています。この事から竜盤目と鳥盤目に分かれる前から羽毛があったことが示唆されます。恐竜の多様化が始まったのは約2億2800万年前と考えられています(ナイシュ&バレット 2019)。

以上のことから、鳥の祖先は、2億2800万年~2億4700万年前のどこかで羽毛を獲得したのではないかと思われます。

 

羽軸のある羽はコエルロサウルス類から

④以降の羽毛を持った鳥の祖先はコエルロサウルス類というグループで出現しました。コエルロサウルス類もまたいろいろな恐竜のグループによって構成されており、その中でもオルニトミモサウルス類やマニラプトル類などで羽軸がある羽毛の化石が出ています(Zelenitsky et al. 2012、Hu et al. 2019)。コエルロサウルス類が出現したのがいつ頃なのかはっきりとはわかっていませんが、1億9000万年前の地層からマニラプトル類のものと考えられている足跡の化石が発見されています(Ishigaki & Lockley 2010)。このことから、④の羽は1億9000万年以上前にあったと推測されます。

そして⑤を持った鳥の祖先はエウマニラプトル類で出現します。現在知られている中で最も古い⑤の羽をもった恐竜は「Caihong juji」という恐竜で、約1億6000万年前にいた恐竜です(Hu et al. 2019)。初期の鳥類である始祖鳥が出現するより1000万年以上前です。羽の進化の最終段階は恐竜の時点で起きていたことが分かっています。

 

まとめ

羽毛を持った動物は鳥類だけでなく、その祖先たちにもありました。羽の進化について年表にすると以下のような形になります。

・約2億2800万年前~2億4700万年前:鳥類の祖先が羽毛を獲得したと推測されます。

・約1億9000万~2億2800万年前:羽軸がある羽毛を獲得

・約1憶6000万年前:初列風切羽を獲得

・約1億5000万年前:鳥類が出現

但し、今回書いた内容は現時点で分かっていることです。今後さらなる化石の発掘や研究で羽毛の進化がいつ頃起きたのかがより具体的になってくる、あるいは現在の説が覆されてしまうかもしれません。

 

参考文献

Fastovsky D E & Weishampel D B/真鍋真監修、藤原慎一、松本涼子訳 (2015) 恐竜学入門―かたち・生態・絶滅(日本語訳) 東京化学同人 396pp

 

Hu D, Julia A C, Eliason M C, Qiu R, Li Q, Shawkey D M, Zhao C, LD’Alba L, Jiang J & Xu X (2018). A bony-crested Jurassic dinosaur with evidence of iridescent plumage highlights complexity in early paravian evolution. Nature Communications. 9 1 217. doi:10.1038/s41467-017-02515-y

 

Ishigaki S & G. Lockley G M (2010) Didactyl, tridactyl and tetradactyl theropod trackways from the Lower Jurassic of Morocco: evidence of limping, labouring and other irregular gaits. Historical Biology 22 1-3 100-108, DOI: 10.1080/08912961003789867

 

ナイシュ ダレン & バレット ポール/小林 快次、久保田克博、千葉謙太郎訳(2019) 恐竜の教科書: 最新研究で読み解く進化の謎 創元社 240pp

 

Yang Z, Jiang B, McNamara E M, Kearns L S, Pittman M, Kaye G T, Orr J P, Xu X & Benton J M(2019) Pterosaur integumentary structures with complex feather-like branching. Nature Ecology & Evolution volume 3, pages24–30

 

Zelenitsky K D, Therrien F, Erickson M G, DeBuhr L C, Kobayashi Y, Eberth A D & Hadfield F (2012) Feathered Non-Avian Dinosaurs from North America Provide Insight into Wing Origins. Science 338 6106 510-514