the kisuke3-5のブログ

主に鳥や恐竜について書いていきたいと思っています。まだ勉強中の身です。よろしくお願いします。

鳥の祖先の小脳の進化について

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鳥の脳の概略図。Northcutt(2011)を参考に描いた。

鳥が飛ぶためには胴体の構造だけでなく、脳の構造も重要です。鳥類は爬虫類から進化しましたが、「頭蓋内の体積/体重」の数値を比較した場合、鳥類は爬虫類の3倍以上もあります(Alonso et al 2004)。

特に「小脳」という運動能力と深くかかわっている部分の発達が重要と考えられています(黒田1986)。鳥は羽ばたき飛翔や滑翔、ホバリング(移動せず空中に滞在する運動)などを行いますが、こういったことをするためには小脳が重要な役割を果たしているのかもしれません。

 

恐竜の中にも飛べたのではないかと考えられている種がいますが、 恐竜たちの脳はどうだったのでしょうか?

因みに、飛べたと考えられている恐竜についてはこちらをご確認ください

urvogel3-5.hatenablog.com

 

恐竜の段階で進化していた?

Balanoff et al (2013)では、頭骨のCTデータを使って獣脚類の頭蓋内の体積を出しました。その結果、絶滅したマニラプトル類は現生鳥類と比較して、体重に対する脳の大きさは小さいですが、脳全体に対する小脳の大きさがほぼ同じという結果になりました。飛翔に適した脳の進化はマニラプトル類の段階で生じていたことが伺えます。この研究では、ミクロラプトルやアンキオルニスなど発達した翼を持った恐竜たちは含まれていませんでしたが、恐らく結果はそれほど変わらないのではないかと推測します。

そして、さらに後になって脳が拡大する進化が起こったと考えられます。

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獣脚類の分岐図(概略)。


どのくらい大きな小脳が必要なのかが課題

この研究では、脳自体は現生鳥類より小さい傾向という結果です。なので、飛翔に適した小脳の大きさがどのくらいなのかを分析することで、これらの恐竜たちが飛翔に適した脳を持っていたのか検証できると、個人的には思います。飛翔の起源がいつなのかを知る手がかりの1つになると思うので、今後の研究の進展に注目したいです。

 

 

参考文献

Alonso D P, Milner C A, Ketcham A R, Cookson J M & Rowe B T (2004) The avian nature of the brain and inner ear of Archaeopteryx Nature 430 666–669

 

Balanoff A, Bever G, Rowe T, & Norell A M (2013) Evolutionary origins of the avian brain. Nature 501 93–96

 

Northcutt G R (2011) Evolving Large and Complex Brains Science 332 6032 926-927

 

栃木県立博物館編集 (1986) 鳥類と哺乳類の計測マニュアル(Ⅰ) 栃木県立博物館 78pp

鳥が飛べるのは手と脚と尾を独自に動かせるから!? では恐竜は…?

鳥は歩いてるとき、腕(翼)を動かしたりしません。一方、飛ぶときは足を動かしません。手と足は完全に独立して動かしていることが分かります。また、尾も独自の運動をすることができています。Gatesy & Dial (1993)では、ハトが離陸するときとその前後での腕、脚、尾の筋肉の動きを、心電図を使って測定しました。その結果、尾は翼や脚とは全く異なる波形を示しており、独自の運動をしていることが分かりました。

しかし、すべての動物が腕、脚、尾が独立しているとは限りません。例えば四足歩行で両生類のサンショウオでは、前肢と後肢の筋肉は運動中ほぼ連動していました(Gatesy & Dial 1996)。初期の陸生動物は腕や脚、尾が独立して運動できるような形態を持ってなく、後になって、進化の過程の中でそのような機能を獲得したと考えられています。

この様に3つのパーツが独自の運動ができるようになることは飛翔をするうえでも欠かせない事と考えられています。もしこのような体の構造になっていなければ、飛行中に脚も動いてしまうなどして、うまく飛ぶことはできなかったかもしれません。

では鳥の祖先である恐竜はどうだったのでしょうか?

少し古い研究ですが、今回これについて紹介したいと思います。

 

初期の恐竜は鳥とは違う?

Gatesy & Dial (1996)では、エオラプトルやヘレラサウルスなどといった初期の獣脚類について考察しています。これらの恐竜たちは鳥とは少し異なる構造で、腕と脚は独立して運動できたが、脚と尾は連動していたという説明されています。

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ヘレラサウルス(左)とスズメ(右)の運動モジュールの数と分布を赤で示した図

 

 

これらの恐竜たちは脚に対して腕がそれほど長くないことから、二足歩行をしていたと考えられていります。この事から腕と脚は独立していたのではないかと説明されています。一方、脚と尾ではこの2つをつなぐ非常に発達した筋肉があったのではないかと考えられています。恐竜の大腿骨には第四転子という突起があります。これは現在のワニにもあり、この突起と尾は非常に発達した筋肉でつながっています。ワニも後肢と尾は連動しており、そうした事から、これらの恐竜たちも後肢と尾は連動していたと説明されています。

尚、鳥には第四転子はなく、大腿骨と尾をつなぐ筋肉も縮小しています。

 

マニラプトル類はどうか?

初期の恐竜から鳥が出現するまでの間で、脚と尾が独立して運動できるような形態になる進化が起きたことが伺えます。ではそれはいつ頃だったのでしょうか?

恐らくですが、マニラプトル類が出現した段階でそのような進化は起きていたと思われます。デイノニクスや始祖鳥には第四転子があったという報告はありません。また、これらのグループは尻尾の骨自体も他の獣脚類と比べて細い作りになっています(Gatesy fig.7)。更に、はコエルロサウルス類全般に言えることかもしれませんが、尾の骨の数も少なくなっています(Gatesy & Dial 1996 fig.6)。コエルロサウルス類では、ティラノサウルスなど第四転子があった種もいました。なのでコエルロサウルス類の中でも一部の恐竜が第四転子を消失し、尾も細く短くなるような真価が起きたものと考えられます。

そうした事から、マニラプトル類では鳥類と同様3つのパーツに分かれていたと推測します。

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ティラノサウルスの大腿骨周辺。第四転子を赤い○で囲った


 

 

まとめ

今回、鳥は翼(腕)、脚、尾が独立して運動することができる形態をしていること、初期の陸生脊椎動物や恐竜はこのような形態ではなかったこと、しかしマニラプトル類の段階では鳥のような形態を獲得していた可能性があることについて説明しました。

マニラプトル類に中にはミクロラプトルやアンキオルニスなど飛ぶことができたと示唆されている恐竜もいます。こういった恐竜たちの脚や尾はどんな構造をしているのか、機会があれば確認したいと思います。

 

参考文献

Gatesy M S (1990) Caudefemoral musculature and the evolution of Theropod Locomotion Paleobiology. 16 2 170-186

 

Gatesy M S & Dial P K (1993) Tail muscle activity patterns in walking and flying pigeons (Columba livia). J. exp. Biol. 176 55–76

 

Gatesy M S & Dial P K (1996) Locomotor modules and the evolution of avian flight. Evolution. 50 1 331-340

 

鳥の祖先に関する研究史 その2

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シノサウロプテリクスの化石体の周を覆う羽毛の痕跡が見つかった。

 

先日、「鳥の祖先に関する研究史 その1」と題して、1970年代までの主な研究についてブログに書きました。

urvogel3-5.hatenablog.com

今回はそのあとどのような研究があったかを書きたいと思います。

 

羽毛恐竜の発見

1996年、中国遼寧省で小型のコエルロサウルス類の化石が見つかりました。この恐竜には「シノサウロプテリクス(中華竜鳥)Sinosauropteryx prima」と命名されました(1)。シノサウロプテリクスの体の周りには羽毛の痕跡が見られます。この事から、恐竜にも羽毛があったことが分かりました。羽毛がある動物は鳥だけでしたので、この発見は鳥の祖先が恐竜であることをほぼ決定的にするような発見でした。更に2009年には始祖鳥がいたときよりもさらに前の時代の地層から羽毛が生えた恐竜の化石が発見されています。この恐竜には「アンキオルニス Anchiornis huxleyi 」と命名されました。種小名は、恐竜起源説を最初に唱えたトマス・ハスクリーからとっています(2) 。

 

前肢の指の矛盾点

鳥の祖先は恐竜ではないかと示唆される化石がたくさん出ていましたが、それでも1つこの説が事実なら大きな矛盾点となるものがありました。それが前肢の指です。鳥も、多くのコエルロサウルス類も前肢の指は3本ですが、指の番号が違うと指摘されていました。恐竜は人間でいう「親指・人差し指・中指」と考えられています。初期の恐竜には5本指がありあしたが、薬指と小指は進化の過程で喪失していることが発掘された化石から示唆されています。一方、鳥の方は発生学では「人差し指・中指・薬指」と考えられてきました。これが大きな矛盾となるという事が指摘されてたのです。

しかし、2011年に東北大学の研究によって、鳥の指も恐竜と同様「親指・人差し指・中指」であることが分かりました。この研究ではニワトリの指の発生過程について調査されています。前肢にはZPAという領域があります。発生段階の中で、指の番号が決まる時期があり、この時期にZPAにある指は薬指化小指になります。しかしニワトリの指はこの段階ではZPAにはありませんでした(3)。

以上の事から、大きな矛盾点が解消され、恐竜が鳥の祖先であるという説は、覆すことが極めて難しいほどの定説となりました。

 

まとめ

1861年に始祖鳥の化石が発見されて以来、鳥の祖先は恐竜ではないかという説について、様々な研究がされてきました。1996年以降、中国などで羽毛をまとった恐竜の化石が複数発見されるようになり、この説はかなり有力なものとなりました。そして、この説の矛盾点だった前肢の指の番号の問題も解決され、この説は覆すことが難しいものとなりました。

この事をブログに書くにあたっていろいろな文献を読みましたが、これが定説になるまでには、世界中のたくさんの恐竜研究者の苦労があったのではないかと思いました。また、先日のブログで書きましたが、この説に異論を唱えた研究者もいました。そういった方々がいたから、より議論が深まったのではないかと思います。

この説の研究にかかわったすべての方々に敬意を表します。

 

参考文献

  • Ji Q & Ji S (1996) On discovery of the earliest bird fossil in China (Sinosauropteryx gen. nov.) and the origin of birds. Chinese Geology (Beijing: Chinese Geological Museum) 10 233 30–33.

 

  • Xu X, Zhao Q, Norell M, Sullivan C, Hone D, Erickson G, Wang X, Han F & Guo Y (2009) A new feathered maniraptoran dinosaur fossil that fills a morphological gap in avian origin. Chin Sci Bull 54 430–435 https://doi.org/10.1007/s11434-009-0009-6

 

恐竜の研究をあきらめる前に考えてみてほしいこと(個人意見です)

恐竜の研究をすることや、更にそれを職にしたいと考えている人は少なくないのではないかと思います。しかしそういった方は、それは非常に難しいと、親や先生、或いは研究者から直接言われたこともあるのではないでしょうか。実際私自身、10代の時にそういわれてきました。

もし、そういったことを言われたり、或いは人には言われていないけどそのように感じたりして、恐竜の研究をあきらめようとしているなら、1度試してみてほしいことがあります。

今回は、昔の自分に言うつもりで書いてみました。もしかつての自分と同じことで悩んだり苦しんでいる方の力になれば、とてもうれしく思います。

 

 

何を試してほしいかというと、それは…

 

鳥を研究する

 

という事です。

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あくまで古生物に拘るのであれば、試しても意味がないかもしれませんが、あくまで恐竜について研究したいというのであれば試してみる価値はあるのではないかと思います。

 

鳥の知見をもとにした古生物の研究

鳥の運動や行動生態に関する知見は恐竜の研究に応用できる場合もあります。私もこの事は恐竜を研究されている方々に教えて頂きました。

例えば、始祖鳥やミクロラプトルが飛べたのかを研究するには、鳥たちがどうやって飛んでいるのかを理解しておくこと必要があります。

私は、このブログや他のサイトで書いた記事でいくつかそのような研究を紹介しております。

urvogel3-5.hatenablog.com

urvogel3-5.hatenablog.com

db3.bird-research.jp

 

今後もこのブログでも鳥の情報をもとにした恐竜の研究を紹介していきたいと思っています。

 

そしてなにより、彼らは恐竜です。

もう4年前の話ですが、2016年の日本鳥学会の発表大会が札幌で開催されました。この大会の最終日は「恐竜学者の鳥のはなしと鳥類学者の恐竜のはなし」というシンポジウムで、恐竜や鳥類の研究者たちの話を聞くことができました。最後の質問時間で、「どうしたら恐竜博士になれますか?」という質問があり、この時演者の1人だった川上和人さんが「鳥類を研究することは恐竜を研究することなので是非鳥類学者を目指してほしい」といった回答をされていました(江田&川上 2018)。私もこの考えに賛同しています。

恐竜の定義は「イエスズメトリケラトプスの直近の共通祖先から派生したすべての子孫」とされています。今生きている鳥たちはすべて例外なく恐竜なので、化石を研究することだけが恐竜の研究とは限りません。特に化石にかかわったことがない人にとっては、博物館に収蔵されている恐竜の化石を研究するより、身近にいる野鳥について研究するほうが始めやすいのではないかと私は思います。

 

まとめ

今回、鳥を研究することは、絶滅した恐竜を研究する上で重要になる場合があるという事、また、鳥を研究すること自体が恐竜を研究することであるという話を書きました。

もちろん、鳥を研究する事やそれを職にすることも決して容易なことではありません。

それに、今生きている鳥の研究をするのはやっぱり違うと感じたら、無理して続ける必要はありません。

しかし、視野を広げればその分可能性も上がってくると思います。面白そうだと思いましたら、ぜひ挑戦されてみては如何でしょうか?

 

参考文献

江田真毅、川上和人(2018) 絶滅した恐竜の威を借る現生の鳥類型恐竜!? 日本鳥学会誌 67 1 3-5



 

鳥の祖先に関する研究史その1

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始祖鳥(ベルリン標本)

すみません、最近更新できていませんでした…

今日は「化石の日」ですね

鳥の祖先は恐竜であるという説は今や定説になっていますが、これが定説になるまでにどんな研究があったのか、今回はこれについて書きたいと思います。

 

恐竜起源説は150年前からあった

恐竜起源説の始まりは、1870年にトマス・ハスクリーが出した論文から始まりました(Huxley 1868)。1861年にドイツで始祖鳥の化石が発見され、鳥類は爬虫類から進化した可能性が高いと言われてきました。そうした中でハスクリーは爬虫類の中でも恐竜が鳥の祖先ではないかと発表したのです。

この論文では、それまでに発見されている恐竜の化石と鳥の骨格の共通点をいくつか説明しています。その中の一例で、骨盤の形があります。骨盤で、大腿骨と接する場所を「寛骨臼(かんこつきゅう)」といいます。恐竜と鳥の寛骨臼は穴が開いており、ここに大腿骨の骨の一部が収まるような形をしていました。このような特徴は他の爬虫類にはありません。

ハスクリーの恐竜起源説に対して反論する研究者もいましたが、これを支持する研究者もいました。そして20世紀にはいると恐竜と鳥類に共通点がたくさん見つかってきます。

 

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ハシボソガラスの骨盤。左図の寛骨臼がある場所を赤い○で囲っている。右図は赤い○がある周辺を拡大したもの。

 

一度は否定されるも新たな化石証拠が発見される

鳥類の祖先は爬虫類だったという説は指示するも、恐竜が祖先という説には批判的だった研究者の中にはいました。そうした研究者の意見には「鳥には鎖骨が癒合してできた叉骨があるが、恐竜には叉骨も鎖骨もないから」という主張がありました(Ostrom J H 1973)。首下に鎖骨という骨があります。人の場合は左右に1つずつある骨ですが、鳥はこの鎖骨同士が癒合して「叉骨」という骨になっています。生物は進化の歴史の中で一度消失した体のパーツを再獲得することはほぼないと考えられています。そうした事から、恐竜の化石から叉骨も鎖骨も見つかっていないので、もし恐竜たちがこの骨を持っていなかったなら、これらのグループから鳥が出現する可能性は非常に低いのではないかと考える研究者がいたのです。

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ハシボソガラスの叉骨の位置を赤い○で囲っている。

しかしモンゴルのゴビ砂漠で発見された小型の肉食恐竜の発見により、この反論は否定されます。ヘンリー・オズボーンは、この恐竜には「オヴィラプトル」と命名されました。オヴィラプトルの化石からは鎖骨間という骨があると報告されています(Osborn 1924)。この骨は鎖骨を構成する骨の一部です。この事から、恐竜にも鎖骨があったことが分かりました。ただ、残念ながらオズボーンが論文を出したときは、これはあまり話題にならなかったそうです。そしてさらに後になって、叉骨があった恐竜もいたことが分かりました(Ostrom J H 1973)。

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オヴィラプトルに近縁な種の骨格標本。叉骨を赤い○で囲っている

 

始祖鳥とコエルロサウルス類では手の骨が似ていた!

更に1973年にはジョン・オストロムが、コエルロサウルス類の化石と始祖鳥の化石を比較した論文を発表しました(Ostrom J H 1973)。コエルロサウルス類とは肉食恐竜のグループの1つで、小型の肉食恐竜が多く(例外もいます)、デイノニクスや先ほど紹介したオビラプトルなどがこのグループに含まれています。その結果、始祖鳥とコエルロサウルス類にはいくつか共通点が見つかりました。その一例が手根骨(手首の骨)です。始祖鳥や一部のコエルロサウルス類の手根骨は半円の形をしています。そう言った特徴がある事から、鳥類は恐竜の中でもコエルロサウルス類から進化したと考えられるようになりました。

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始祖鳥の手。手根骨を赤い○で囲っている
 

 

まとめ

鳥の祖先が恐竜ではないかという説は今から150年前からありました。その後、叉骨がある、手の骨の形が似ているなど様々な共通点が骨にあることが分かり、この説は有力になっていきます。

次回、それ以降の研究史についても紹介したいと思っています。興味を持っていただけましたら是非お付き合いください。

 

参考文献

Huxley T H (1868) On the animals which are most nearly intermediate between birds and reptiles. Ann Mag Nat Hist 4th 2: 66–75.

Osborn H F (1924). "Three new Theropoda, Protoceratops zone, central Mongolia". American Museum Novitates. 144: 1–12.

Ostrom J H (1973) The ancestry of birds. Nature 242: 136.

鳥類の祖先たちの羽毛の進化について

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主竜類における鳥類の位置を示した分岐図。-は羽毛の発生段階を示している

は、「羽毛の進化の流れ」の①②

は、「羽毛の進化の流れ」の③④

は。「羽毛の進化の流れ」の⑤

 

 

羽毛をもつ現生の動物は鳥類だけですが、古生物も含めると鳥類の祖先である恐竜にもあった事が分かっています。羽はどの段階でどのように進化したのでしょうか?

様々な化石の発見から、現在分かっていることについて、今回書きたいと思います。

 

羽毛の進化の流れ

羽毛は次のような段階を経ていると考えられています(Fastovsky & Weishampel 2015)。

①羽嚢という筒状の繊維

②1本の根から複数の繊維が出ている状態

③羽軸ができその両側に羽枝がある。さらに羽枝の両側には小羽枝ができた状態。

④羽枝間の小羽枝同氏が絡み合い「羽板」を形成した状態

⑤羽軸を境に羽板の幅の広さが異なるようになる(初列風切羽)。

 

恐竜が出現する前から羽毛はあった?

実は羽毛は恐竜だけでなく翼竜にもあった可能性があります。Yang(2019)をのfig.1などを見ると、②のような状態に見えます。

この事から羽毛は恐竜と翼竜の共通の祖先の段階ですでにあった可能性があります。恐竜(鳥類を含む)と翼竜、ワニなどを含めた爬虫類のグループを「主竜類」と言います。約2億4700万年前に主竜類は、恐竜(鳥類を含む)と翼竜のグループとワニのグループに分かれます(ナイシュ&バレット 2019)。このころから羽毛はあったのかもしれません。

ただし、恐竜と翼竜が分岐した後に、それぞれが独自に進化して獲得した可能性もまだあります。しかし、その場合でも恐竜が羽毛を獲得したのはかなり早い段階だったのではないかと思われます。恐竜は系統的に大きく2つのグループに分けることができます。1つが「竜盤目」もう1つが「鳥盤目」です。紛らわしいですが、鳥は竜盤目です。そして鳥盤目の恐竜の化石から羽毛の化石が出ています。この事から竜盤目と鳥盤目に分かれる前から羽毛があったことが示唆されます。恐竜の多様化が始まったのは約2億2800万年前と考えられています(ナイシュ&バレット 2019)。

以上のことから、鳥の祖先は、2億2800万年~2億4700万年前のどこかで羽毛を獲得したのではないかと思われます。

 

羽軸のある羽はコエルロサウルス類から

④以降の羽毛を持った鳥の祖先はコエルロサウルス類というグループで出現しました。コエルロサウルス類もまたいろいろな恐竜のグループによって構成されており、その中でもオルニトミモサウルス類やマニラプトル類などで羽軸がある羽毛の化石が出ています(Zelenitsky et al. 2012、Hu et al. 2019)。コエルロサウルス類が出現したのがいつ頃なのかはっきりとはわかっていませんが、1億9000万年前の地層からマニラプトル類のものと考えられている足跡の化石が発見されています(Ishigaki & Lockley 2010)。このことから、④の羽は1億9000万年以上前にあったと推測されます。

そして⑤を持った鳥の祖先はエウマニラプトル類で出現します。現在知られている中で最も古い⑤の羽をもった恐竜は「Caihong juji」という恐竜で、約1億6000万年前にいた恐竜です(Hu et al. 2019)。初期の鳥類である始祖鳥が出現するより1000万年以上前です。羽の進化の最終段階は恐竜の時点で起きていたことが分かっています。

 

まとめ

羽毛を持った動物は鳥類だけでなく、その祖先たちにもありました。羽の進化について年表にすると以下のような形になります。

・約2億2800万年前~2億4700万年前:鳥類の祖先が羽毛を獲得したと推測されます。

・約1億9000万~2億2800万年前:羽軸がある羽毛を獲得

・約1憶6000万年前:初列風切羽を獲得

・約1億5000万年前:鳥類が出現

但し、今回書いた内容は現時点で分かっていることです。今後さらなる化石の発掘や研究で羽毛の進化がいつ頃起きたのかがより具体的になってくる、あるいは現在の説が覆されてしまうかもしれません。

 

参考文献

Fastovsky D E & Weishampel D B/真鍋真監修、藤原慎一、松本涼子訳 (2015) 恐竜学入門―かたち・生態・絶滅(日本語訳) 東京化学同人 396pp

 

Hu D, Julia A C, Eliason M C, Qiu R, Li Q, Shawkey D M, Zhao C, LD’Alba L, Jiang J & Xu X (2018). A bony-crested Jurassic dinosaur with evidence of iridescent plumage highlights complexity in early paravian evolution. Nature Communications. 9 1 217. doi:10.1038/s41467-017-02515-y

 

Ishigaki S & G. Lockley G M (2010) Didactyl, tridactyl and tetradactyl theropod trackways from the Lower Jurassic of Morocco: evidence of limping, labouring and other irregular gaits. Historical Biology 22 1-3 100-108, DOI: 10.1080/08912961003789867

 

ナイシュ ダレン & バレット ポール/小林 快次、久保田克博、千葉謙太郎訳(2019) 恐竜の教科書: 最新研究で読み解く進化の謎 創元社 240pp

 

Yang Z, Jiang B, McNamara E M, Kearns L S, Pittman M, Kaye G T, Orr J P, Xu X & Benton J M(2019) Pterosaur integumentary structures with complex feather-like branching. Nature Ecology & Evolution volume 3, pages24–30

 

Zelenitsky K D, Therrien F, Erickson M G, DeBuhr L C, Kobayashi Y, Eberth A D & Hadfield F (2012) Feathered Non-Avian Dinosaurs from North America Provide Insight into Wing Origins. Science 338 6106 510-514

似てる?ミクロラプトルとカラスの特徴を比較

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ミクロラプトルの化石(上)とハシブトガラス(左下)とハシボソガラス(右下)

 

ミクロラプトルの論文を読んでいて時々「なんかカラスに似てるな~」と思う事があります。ここでいうカラスは、ハシブトガラスとハソボソガラスのことです。もちろんミクロラプトルはカラスと似てない部分も多々あります。恐らく生きていた頃のミクロラプトルの姿はそれほどカラスには似てはいなかったと思います。ミクロラプトルには歯、鉤爪を持った前肢、長い尾、翼になっている後肢などカラスや現生鳥類にはない特徴が数多くあります。また、体の大きさでもミクロラプトルの全長は約77㎝だったと考えられています(Xu et al. 2003)。ハシボソガラスが約54~60㎝(松原2007)、ハシブトガラスが約50.4㎝(高木2004)なので、ミクロラプトルの方が大きいです。もちろんミクロラプトルは、カラス科はもちろん、現生鳥類の系統の中にはいません。

 

その上で、どんなところを似てると感じたか、書きたいと思います。

 

体の色

ミクロラプトルの羽毛の色は弱い虹色の光沢をもつ黒だったと考えられています(Li et al. 2012)。カラスの羽毛も「烏の濡れ羽色」なんて言葉があるように青い光沢のある黒です。虹色という点は異なりますが、光沢のある黒という点は共通しています。

 

翼の性能

翼の性能を示す指標の1つに「アスペクト比」があります。アスペクト比とは、縦横比で、細長い翼ほどこの数値が高くなります。アスペクト比の数値が高いと揚抗比も高くなります。揚抗比が高いとエネルギーを節約して飛ぶことができます。なので細長い翼ほどエネルギー消費を抑えて飛ぶことができるという事になります(テネケス1999)。ミクロラプトルのアスペクト比は約6.69、揚抗比は4.6と考えられています(Chatterjee & Templin 2007)。一方ハシブトガラスは、揚抗比はまだ情報を見つけられませんでしたが、アスペクト比は6~7です(白井 2019)。ハシボソガラスアスペクト比は5、揚抗比は5あると考えられています(テネケス1999)。これらのことから、ミクロラプトルとカラスでは、飛行中のエネルギー消費はほぼ同じくらいだった可能性があります。

以前、高速道路を走っていた時、正面をハシブトガラスが滑空をしているのを見ました。このときは左下がりで落ちていきましたが、数秒くらい飛んでいて、20m以上は移動していたのではないかと思います。エネルギー消費の度合いがほぼ同じならミクロラプトルも生きていたころはこれくらいの滑空をしていたかもしれません。ハシブトガラスが滑空だけで飛んでいる姿はあまり見かけることがないように思いますが、今後もう少し注意深く観察してみたいと思います。

但しミクロラプトルにはカラスにように、翼を羽ばたかせるための筋肉はあまり発達していなく、おそらく長距離を移動するといったことはできなかったと思われます。

 

まとめ

ミクロラプトルとカラスでは相違点も多々ありますが、その上で私が個人的に「何かカラスと似ているなぁ」と思ったミクロラプトルの特徴について書きました。もっと調べてみると他にもいろいろ出てくるかもしれません。引き続き論文を読むことやカラスの観察などを続けていきたいと思っています。

 

 

参考文献

Chatterjee S, Templin RJ (2007) Biplane wing planform and flight performance of the feathered dinosaur Microraptor gui. Proc Nat Acad Sci USA 104:1576–80.

 

Li Q, Gao Q K, Meng Q, Clarke A J & Shawkey D M (2012) Reconstruction of Microraptor and the Evolution of Iridescent Plumage. Vol. 335, Issue 6073 1215-1219

 

松原始(2007)生態図鑑ハシブトガラス. バードリサーチニュース4(7)

 

高木 憲太郎(2004)生態図鑑ハシボソガラス. バードリサーチニュース1(4)

 

テネケス ヘンク/ 高橋健次訳 (1999) 鳥と飛行機どこがちがうか―飛行の科学入門 (日本語訳) 草思社 201pp

 

Xu X, Zhou Z, Wang X, Kuang X, Zhang F & Du X. (2003) Four-winged dinosaurs from China. Nature 421 6921 : 335–340