the kisuke3-5のブログ

主に鳥や恐竜について書いていきたいと思っています。まだ勉強中の身です。よろしくお願いします。

飛べない鳥の翼の羽について

飛べる鳥の翼の羽は羽軸・羽枝・小羽枝によって構成されています。羽軸の両端に羽枝が付着し、さらに1本1本の羽枝の両端に小羽枝が付着しています。小羽枝には鉤状の構造を持つ「有鉤小羽枝」と弓状の「弓状小羽枝」があります。これらの小羽枝群が重なり合うことで、「羽板」を形成しています(ポルトマン 2003)。

これらの形状は、キャノングローバルさんのHPに図が載っています。

 

 

一方、飛べない鳥の場合は種によって羽の形は違っているようです。現生鳥類で飛べない鳥には平胸類(ダチョウ科、レア科、ヒクイドリ科、エミュー科、キーウィ科)とペンギン科、ウ科、クイナ科、カモ科、カイツブリ科、インコ科の鳥がいます。そのうち平胸類とペンギン科はすべて飛べない鳥で、ほかの分類群には飛べる鳥もいます。これらの鳥たちの翼の羽はどのようになっているのでしょうか。今回これについて少し書きたいと思います。

 

飛べない鳥たちの初列風切羽は?

平胸類の翼の羽には弓状小羽枝がありません(McGowa 1989、図1)。

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図1.ダチョウの翼の羽。右は小羽枝。腕のどの部分に付着していた羽なのかははっきりとはわからないが、ダチョウの翼の羽はすべて羽板を形成できていない。

 

次にペンギン科です。実はペンギン科の翼の羽には飛べる鳥と同様羽軸、羽枝、有鉤小羽枝、弓状小羽枝があります(McGowa 1989 fig.3)。ただ、飛べる鳥のような羽板は形成できていなさそうです。ペンギンは飛びませんが、水中を泳ぐときに翼を使います。そうしたときに羽板が必要なのかもしれません。

最後のほかの鳥たちの翼の羽ですが、これらの鳥たちの多くは飛べる鳥たちと非常によく似ています。 初列風切羽も左右非対称の形をしている種も複数いるようです(McGowa 1989、Wang et al. 2017、ヤンバルクイナの翼)。

 

 

飛べない鳥同士でなぜ羽の形が違うのか?

今回、飛べない鳥たちの翼の羽の形について紹介してきました。それぞれの種がなぜこのような形状になっているのかはっきりとした理由は分かりません。ただ、飛翔能力を喪失して1番時間が経っているのは平胸類です。飛翔能力を喪失してからの時間が経つと、翼の羽は飛翔により適さない構造になっていくのかもしれません。

 

参考文献

McGowan C (1989) Feather structure in flightless birds and its bearing on the question of the origin of feathers. Journal of Zoology 218: 537 - 547

 

ポルトマン アドルフ/ 長谷川博訳 (2003) 鳥の生命の不思議 (日本語訳) どうぶつ社 195pp

 

Wang X, Nudds L R, Palmer C & Dyke J D (2017) Primary feather vane asymmetry should not be used to predict the flight capabilities of feathered fossils. Science Bulletin 62 : 1227-1228

 

鳥の羽根をさがしてみよう 自由研究にもおすすめ!いろいろな羽根のヒミツ(最終閲覧日:2020年8月10日)

https://global.canon/ja/environment/bird-branch/bird-column/kids1/index.html

 

山階鳥類研究所 標本データベース(最終閲覧日:2020年8月10日)

https://decochan.net/index.php?p=2&o=ssp&id=68610)